ニューヨークでの個展開催で思い知らされた【個展に生かすべきこと3つ】

2013年の10月、私はニューヨークのとあるギャラリーで個展を開催した。

遡ることその個展のさらに2年前。忘れもしない東日本大震災でボランティアをしていた休憩時間。
メールがきていたので開くとそこには、グループ展に作品を送ったニューヨークのギャラリーからのメール。
端的にいうと『ニューヨークで個展に興味ありますか?』といった内容。
秒即返信『あるあるアルーーーーーーーーーーー!!!!!!!』
で、個展が決まった。(積極的に日本人アーティストとの個展やグループ展を仕掛けているギャラリーなので、海外に興味あるアーティストには有名なギャラリーかもしれない。
個展やるなら絶対に現地にいくと決めていた私は短期留学をかねて3ヶ月間ニューヨークへ行くことにした。
留学しとけば友達作って個展に誘えると踏んでいたのだ。(やらしい。けど思惑通り
新しい土地が異常に好きな私はニューヨークに着いてから1週間ほどで足から血が出るほど歩いた。新品だったわたしの靴は1ヶ月もすると壊れた。
ギャラリーやミュージアム、ストリートアートなどを見倒した。



念願のブロードウェイ鑑賞や、語学学校の他にアートスクールへ通ったりもした。やりたいことが多すぎて数回だけしかやれなかったけど、私の初めてのバスキングは実はこの時。アメリカは見つかると強制送還の恐れがあったので何も売らずただ絵を描いた。世界のアートの中心地でやるバスキングにドキドキが止まらなかった。
全く暇のない毎日で電車の移動中に絵を描いて、帰ったら勉強して、友達と一緒に英語の勉強したりギャラリー行ったりして、もうすっかり自分の個展のことなど忘れていた(とてつもないアホ
それでも頭のどこかに配属されている優秀な細胞が警告を出してくれた。
『個展の当日に絵を描いていないのに森の中で呆然とする』夢を見たのだ。ありがとう細胞。わたし、どうかしてた・・
そこからとんでもない集中力で個展の準備を始める。絵はもともと持ってきてたものと現地で描いたもの。
なんとか個展開催に間に合い、現地の友達やホストファミリーやご近所さん、シェアメイトやギャラリーの顧客、そして姉たちもオープニングパーティに来てくれてすごく充実した個展となった。



そしてわたしはそこから怒涛の忙しさでバタバタしながら日本に帰国し、底なし沼にいるような悲しみと後悔と悔しさで約1ヶ月間落ちに落ちて落ち込んだ。水色のピノキオっぽい人形に励まされる幻覚まで見た。
ニューヨークに刺激され、ニューヨークに殺されたわたし
たくさんありすぎて当時の私は一体何に落ち込んでいるのかはっきりわかっていなかった。
1 現地にはたくさん友達がいるので別れがツラかった
2 刺激がたくさんありすぎて日本のモノクロムードに戻れなかった
3 たくさんギャラリーや美術館やストリートアートを吸収しすぎて呼吸ができなくなった
4 それを受けて自分のニューヨーク個展のショボさに死ぬほど落ち込んだ
5 自分の小ささに愕然とした
6 聞こえてくるのが全部日本語(当たり前だけどこの時のわたしには相当ショックだった)
そんなことが私の中で渦巻いてグチャグチャになって立ち上がれなくなった。
(それでもポジティブクソ野郎な私は悩んでる自分を上から覗き込み、悩み切った後の成長を遂げた自分を想像して浮かれたけども)
毎日沼を這い回っているような状態だった。この後にやった個展はやる決意をするのにすごく時間がかかった。吸収したデカイものを吐き出すのはなんとも苦しい作業である。
NYの個展で学んだこと 1
一番は空間の作り方。それまでの私は絵がよければオッケーだったけど、考え方が変わった。
個展の空間を作り上げること、それがとても大事だった。日本と違って絵の設置も全部独りでやった。急に知らされたので正直焦った。(もちろんギャラリーによるけども日本の常識はないと思った方が賢明
絵と絵の間隔、見やすい高さ。そればかりを気にしていた私は、出来上がった会場を見て最初は満足していたが、徐々に気付き始める。
『な、なんてつまらない飾り方・・ダッサ・・・変えたい・・・』
おそらく日本で個展し続けたとしても気づけなかったと思う。わたしに与えられた時間は数時間のみで、もちろん変える時間はなく個展が始まる。悶々とした状態で期間中を過ごす。
空間も作品の一部だと認識することが大事である。
NYの個展で学んだこと 2
それはギャラリーの選び方。
個展は声をかけてもらってやるんじゃない。もちろんそういうこともあるけれど、お金を払えばどこでだって大抵は開催できる。
声をかけてもらうのを待つのではなく、自分からギャラリーを選びに行く。自分の大切な空間を作りあげる場所だからだ。
正直この時お世話になったギャラリーは場所も入りやすさもあまり良くなかった。お世話になっておいてアレだけど全然良くなかった。(現在はシティ内でやったりしてるようですが詳細は分かりません
車がビュンビュン通る交通量の多い車道。駅からしばらく歩く人通りのあまりないストリート。オープニング以外はインターフォンを押さないと入れない。個展期間中であるはずの日に友達を連れて会場へ行き、インターフォンを押したが応答なし。在廊する必要はないと言われる。外来のお客さんもいるけれど、毎回個展に来るのは顔見知りもしくはスタッフなどで集客力に欠ける。
先ほども書いたが空間作りの時間を長く取りたかったことと、もう少し協力的に、ギャラリーとしての提案なども欲しかった。これは自分も経験不足(プラス計画性のないアホ)だったため文句は言えない。
そのギャラリーを否定する訳ではないが、日本人アーティストは作品を送り、現地に来ることはない、もしくは来ても期間中のみで土地勘がないままNYで個展をやったことに満足するのでそのことに気づかないのかもしれない。
しかし私は目の当たりにしてしまった。これが全て無駄だったとは思わない。でもギャラリーはきちんと選ぶべきだと強く思った。これはただの『海外で個展した』という肩書きのみの個展だった。(何度もいうがこれはギャラリー否定ではないし現在の活動についてはよく知らないので改善されているかも)
現地で知り合ったライターの方がとあるギャラリーを紹介してくれたことがあった。一緒に行かせてもらい個展できるか聞きに行った。オーナーに断られた。絵がどうとかお金がどうこうではない。
『あなたは3ヶ月しかいないんでしょう?私のギャラリーでは短期で来たアーティストの展示は無理なの。時間をかけて最高の空間を作りあげるから』
と言われた。すっごくジーンときた。今度個展するならこういうギャラリーにしようと心から思った。
NYの個展で学んだこと 3
自分もしくは作品のストーリーを伝える大切さ。
日本でやった個展ではあまり感じてこなかったこの感覚。海外の方はアーティスト自身や絵に込められたストーリーを重視している気がする。
日本のように学歴やどの師についたか、どの賞をとったかなどの表面的なことではなく、どのようなことに心を打たれこの作品につながったのか、何を考え何を表現したいのかを聞かれることが多かった。
海外で個展を開くのであればある程度そんなことを伝えられるように用意しておくべきだった。英語がヘタクソであっても一枚一枚に込めた想いを書き出し、英訳をし朗読でもよし、置いて読んでもらうでもよし、とにかく伝えることが大事である。
自分のプロフィールはしっかりと作り上げておくことをオススメする。最初の私のプロフィールは散々なもので、
・何を使って描いてる
・こんなことをやった
・個展何回やった
しか書いてなかった。ショボッ
それをギャラリーのスタッフさん(アメリカ人で日本語が達者なシャイボーイ)にインタビューをしてもらいながら、
・どこに生まれ何を感じ育った
・誰に影響を受けどういう絵を描く
・何を想い何を表現したくて絵を描いている
とまあこんな感じで色濃く書いていただいた。英語は当時よりもできるようになったが、流石にネイティブに書いてもらったほどの英文は書けない。達者な方に依頼するのもいいと思う。
まとめー
私にとってニューヨークは、良い意味で私を切り刻み壊し、それを再生する力をくれた気がする。実際ニューヨークを期にぬるいアーティストライフは壊れた。もがき苦しんだ。何をすれば良いのか、どう生きていけば良いのかわからなくなってしまったのだ。
グラフィックデザインに手を出したり旅に出たりと、特にNYへ行ってからいろんな経験をしたけれど、全てアーティストとして苦しんでたからに違いない。
ただそれを乗り越えたあと私は成長し新しい気持ちでアーティスト活動ができるようになったと思う。
もしかすると今回のことはアートを学んだ方は誰もが知っていることかもしれない。けれど独学で、生きながら学んでいる私にとって自分の肌で感じて知り得たこと。机上の空論よりも肌に感じたことの方が、どんなに遠回りであっても身に染みると私は思う。
お世話になったギャラリーに文句を言ってるみたいになるのが嫌でなかなかこのブログを書ききれずにいましたが、大切な私の経験のひとつなのでシェアすることにしました。
個展とは自分の絵をただ飾る場所と思わず、まるまるその空間に向き合い集中すべきである。こんな記事を書いてたら個展したくなってきたのでちょっとギャラリー探ししてきます。ではまた。
More from my site
エンドウシノブ
最新記事 by エンドウシノブ (全て見る)
- ニューヨークでの個展開催で思い知らされた【個展に生かすべきこと3つ】 - 2020-02-06
- RAW ARTISTになってみた【海外でのアートイベント参加】 - 2020-02-02
- うまくいかなかったらコレ。アート系バスキングの5つのコツ - 2020-01-30